出会い系アプリを届出をせずに運営したとして、「ツートーク」の運営業者2人が逮捕されるニュースが先日飛び込んできました。
私自身も過去に無届でチャットアプリ(という名目の出会い系アプリ)を運営していた経験があり、決してこの事件が他人事ではないような気がしています。
そこで、出会い系を運営する立場から今回の事件を振り返ってみたいと思います。
事件の概要とポイント
今回の事件の概要は下記の通りです。
スマートフォン向けの「出会い系サイト」アプリを運営したにもかかわらず、管轄の公安委員会に届けなかったとして、愛知県警は8日、川崎市にあるアプリ開発会社経営者の20代の男ら2人を出会い系サイト規制法違反(無届け)の疑いで逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。
捜査関係者によると、同社はチャット相手を募集し、出会った人とメッセージをやりとりできるアプリ「ツートーク」を開発し、運営していたが、経営者の男ら2人は昨年10月~今年4月ごろ、神奈川県公安委員会に届け出ないまま、インターネット異性紹介事業を運営した疑いがある。
出会い系の運営には届出が必要
そもそも出会い系サイトやアプリを運営するには、インターネット異性紹介事業の届出をしなければなりません。
これは出会い系サイト規正法という、18歳未満の少年少女を出会い系に関するトラブルから守ることを目的とした法律で定められていることです。
そう思う方も多いと思いますが、たしかに届出自体はそんなに難しいものではありません。必要な書類を公安委員会(管轄する警察署経由)へ提出するだけです。
届出をしない業者が多い理由
ではなぜ届出をしない業者が多いかというと、届出すなわち出会い系ということを認めると、色々な不都合が生じると業者は考えるからです。
例えば、児童でないことの確認、いわゆるユーザーの年齢確認が利用前に必要となります。身分証の提示を不安に感じたり、面倒だと思うユーザーはこの時点でいなくなってしまうわけです。
私の経験上、会員登録後に年齢確認をしないユーザーは相当数いると言えます。サービスを盛り上げるためには、年齢確認がないほうが業者には都合が良いというわけです。
また、それ以外に自分たちの存在を警察に知られたくないという理由もあります。もしサクラを使った悪質なサービスだった場合、悪徳業者はわざわざ警察に存在を知らせるようなことはしません。
チャットアプリは出会い系なのか?
そして、事件の最大のポイントは、チャットアプリは出会い系に該当するのか?ということです。
そう思う方も多いと思いますが、問題は出会い系サイト規正法で定めるインターネット異性紹介事業(いわゆる出会い系)の定義にチャットアプリが当てはまるかどうか、という点です。ガイドラインによる定義は以下の通りです。
異性交際(面識のない異性との交際をいう。以下同じ。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業
つまり、上記に該当するサービスであれば、チャットアプリだろうとなんであろうと全て出会い系と見なされます。
したがって、「ツートーク」もチャットアプリではなく出会い系アプリと見なされたために、今回の逮捕に至ったというわけです。
チャットアプリの危険性
チャットアプリが危険な理由
今回の事件のような出会い系サイト規正法に違反しているチャットアプリは相当数あります。
18歳未満の子供が、そのようなチャットアプリを簡単に利用できてしまうことが最大の問題点です。実際に「ツートーク」をめぐっては、昨年2月に中学生にみだらな行為をした疑いで男が逮捕される事件も発生しています。
大人の利用者も、チャットアプリを通じて知り合った相手が18歳未満の子供だった場合、相手が年齢を偽っていたとしても責任を問いかねられないでしょう。
無届による摘発は多くない
昨年にも「年上フレンズ」という無届けの出会い系アプリの運営者が逮捕されていますが、無届による摘発の件数はそんなに多くはありません。
逮捕された「ツートーク」の運営業者は「出会い系ではなく、チャットアプリのつもりだった」などと容疑を否認しているそうですが、私の知っている中には、届出が必要な事を認識していながらも無届けでチャットアプリを運営する業者もいます。
結果、出会い系サイト規正法に違反したチャットアプリが次々と誕生してしまっているわけです。
まとめ
チャットアプリと出会い系の境界線は曖昧な部分もありますが、今回の事件でそれはハッキリしつつあるのではないでしょうか。
無届でチャットアプリを運営している業者は、今頃は肝を冷やしていることでしょう。ただ、今回の事件は見せしめ効果はあるかもしれませんが、出会い系サイト規正法を遵守しようとする業者がすぐに増加するとも思えません。
制限速度を超えている車のすべてがスピード違反で取り締まられるわけではありません。一般道路では歩行者が、出会い系では利用者が、自分の身は自分で身を守らないといけないということを忘れないで下さい。
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